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札幌地方裁判所 平成7年(わ)749号 判決 1996年2月07日

(被告人)

一 法人の名称

北日本土地株式会社

本店所在地

札幌市豊平区美園九条八丁目八番地

代表者の氏名

佐々木正吉

代表者の住居

札幌市豊平区真栄五条一丁目七番一七号

二 氏名

佐々木正吉

年齢

昭和二〇年九月一二日生

本籍

北海道帯広市西一〇条南三〇丁目三番地

住居

札幌市豊平区真栄五条一丁目七番一七号

職業

会社役員

(検察官)

谷口照夫

(弁護人)

山田廣(被告人両名、私選)

主文

被告人北日本土地株式会社を罰金四〇〇〇万円に、被告人佐々木正吉を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人佐々木正吉に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人北日本土地株式会社(平成元年一〇月二日から平成六年四月二五日までの商号は、カネヨシ北日本土地株式会社)は、札幌市豊平区美園九条八丁目八番地(右期間は同市中央区大通西二〇丁目四六番地二六三)に本店を置き、不動産売買、斡旋等を営業目的とするものであり、被告人佐々木正吉は、同社の代表取締役として、同社の業務を統括するものであるが、被告人佐々木において、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  受取仲介料収入を除外し、さらに架空の仲介手数料等を計上するなどの不正な方法により所得を隠匿した上、別紙一、二のとおり、平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が八四四一万五六三八円で、課税土地譲渡利益金額が五一五六万四〇〇〇円であったにもかかわらず、平成二年九月二七日、札幌市中央区北七条西二五丁目札幌西税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二二五二万〇九七九円で、課税土地譲渡利益金額は零であり、納付すべき法人税額が七四八万五一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年一〇月一日を徒過させ、もって、不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額四七六八万六三〇〇円と右申告税額との差額四〇二〇万一二〇〇円を免れ

第二  土地売上げを除外し、さらに架空の仲介手数料を計上するなどの不正な方法により所得を隠匿した上、別紙三、四のとおり、平成二年八月一日から平成三年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億三六一五万三〇七〇円で、課税土地譲渡利益金額は一億六七九六万一〇〇〇円であったにもかかわらず、平成三年九月二七日、同市西区発寒四条一丁目七番一号札幌西税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二八九万五七四九円で、課税土地譲渡利益金額も零であり、納付すべき法人税額は皆無である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年九月三〇日を徒過させ、もって、不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額一億〇〇〇四万円を免れ

第三  架空の外注委託費等を計上するなどの不正な方法により所得を隠匿した上、別紙五、六のとおり、平成三年八月一日から平成四年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が八〇六九万三七四八円で、課税土地譲渡利益金額が一九四八万六〇〇〇円であったにもかかわらず、平成四年九月三〇日、前記第二記載の札幌西税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三六六八万七一四四円で、課税土地譲渡利益金額は零であり、納付すべき法人税額が一二七七万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年九月三〇日を徒過させ、もって、不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額三四三九万八七〇〇円と右申告税額との差額二一六二万七七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(注)証拠の標目に付した数字は、記録中の証拠等関係カード(請求者等検察官)甲・乙の番号である。

全事実について

一  被告人会社代表者兼被告人佐々木正吉(以下この項において単に「被告人佐々木」という。)の公判供述

一  被告人佐々木の検察官に対する供述調書(乙14)

一  被告人佐々木の大蔵事務官に対する質問てん末書(一一通、乙1ないし4、7ないし13)

一  杉野明(甲26)、野々山博(甲31)及び山本眞由美(二通、甲37、38)の検察官に対する各供述調書

一  杉野明(二通、甲24、25)、野々山博(四通、甲27ないし30)、山本眞由美(五通、甲32ないし36)、田中孝祈(甲39)、高柳勝久(甲40)、高橋昇司(甲41)、弘中正利(甲42)及び高畑靖典(甲43)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の「期末棚卸高調査書」(甲5)、「仲介手数料調査書」(甲6)、「雑収入調査書」(甲14)、「反則所得合計(P/L)調査書」(甲19)、「脱税経費支出金調査書」(甲20)、「反則所得合計(B/S)調査書」(甲21)、「所得金合計(B/S)調査書」(甲22)及び「調査事績報告書」(甲44)と題する各書面

一  検察官事務官作成の捜査報告書(二通、甲45、46)

一  登記簿謄本(二通、甲69、乙16)

一  押収してある法人税決議書一綴(平成七年押第一六五号の1)(甲23)

第一、第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の「受取仲介料収入調査書」(甲1)及び「商品仕入高調査書」(甲4)と題する各書面

第一の事実について

一  南出武夫の検察官に対する供述調書(甲51)

一  鈴木義彦(甲47)、原田完一(甲48)、南出武夫(甲49)、鈴木泰紘(甲50)及び紫桃勝(甲52)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の「支払紹介料調査書」(甲7)、「外注整地費調査書」(甲8)と題する各書面

第二の事実について

一  山本直克の検察官に対する供述調書(甲55)

一  山本直克(二通、甲53、54)、安達智紀(三通、甲56ないし58)、松浦勉(四通、甲59ないし62)、白土孝次(甲63)及び白土武夫(甲64)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の「土地売上調査書」と題する書面(甲2)

第二、第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の「期首棚卸高調査書」(甲3)、「租税公課調査書」(甲10)、「雑費調査書」(甲11)、「受取利息調査書」(甲12)、「支払利息・割引料調査書」(甲13)、「損金の額に算入した道府県民税利子割調査書」(甲15)、「新規取得土地等の負債利子損金不算入額調査書」(甲16)及び「事業税認定損調査書」(甲17)と題する各書面

第三の事実について

一  中山義正(甲65)及び渡辺吉雄(甲66)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の「外注委託費調査書」(甲9)及び「繰越欠損金の当期控除額調査書」(甲18)と題する各書面

(法令の適用)

被告人佐々木正吉の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑を選択するところ、右は刑法(平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法をいう。以下同じ。)四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人佐々木を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

被告人佐々木の右判示各所為はいずれも被告人会社の代表者である被告人佐々木が被告人会社の業務に関してしたものであるから、被告人会社に対してはいずれも法人税法一六四条一項により同法一五九条の罰金刑を科すべきところ、その多額については、いずれも情状により同条二項によることとし、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金四〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

一  本件は、被告人会社の代表取締役である被告人佐々木が、平成元年八月から平成四年七月までの三事業年度にわたり、受取仲介料収入や土地譲渡益を除外して利益を隠匿するとともに、架空の仲介手数料や外注委託費を計上するなどして経費を過大に計上し、被告人会社の法人税合計一億六一八六万余円を免れたという事案である。

ほ脱税額は右のとおり多額であり、ほ脱率も約八八・九パーセントと高い。とりわけ、平成三年七月期については、多額の所得・利益がありながら、赤字決算であるなどとして一億円を超える法人税の金額を免れたものであり、はなはだ悪質である。また、ほ脱の手段も、脱税協力者(いわゆる「かぶり屋」)に利益が帰属したかのような外観を作出してその隠匿を図ったり、取引先の協力を得て水増し領収書を入手し経費を過大に計上するなど、計画的、巧妙であり、これまた悪質である。

犯行の動機は、被告人佐々木が、過去に自分の会社を倒産させた経験があることから、不景気に備えて会社の体力を温存し、会社の存続と従業員の生活保障を図るためというのであるが、これは結局のところ、被告人佐々木と被告人会社の利益の追求のためというにほかならないのであって、酌量の余地はない。

被告人両名の刑事責任は重い。

二  しかし、本件発覚後、被告人会社においては各事業年度について修正申告をし、本税のほか、重加算税、延滞税、地方税について納税計画書を提出し、これを履行する予定であること、被告人両名とも犯罪歴はなく、被告人佐々木は反省の情を示していること等、被告人両名に有利な事情も存する。

三  よって、以上の事情を総合的に考慮し、それぞれ主文掲記の刑を科した上、被告人佐々木についてはその刑の執行を猶予することとして、主文のとおり判決する。

(求刑) 被告人会社につき罰金四五〇〇万円

被告人佐々木につき懲役一年六月

(裁判長裁判官 長島孝太郎 裁判官 川合昌幸 裁判官 飯島敬子)

別紙一

修正損益計算書

<省略>

別紙二

ほ脱税額計算書

<省略>

別紙三

修正損益計算書

<省略>

別紙四

ほ脱税額計算書

<省略>

別紙五

修正損益計算書

<省略>

別紙六

ほ脱税額計算書

<省略>

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